安定と発展を備えるASEANのかなめ「タイ」
【タイ王国】
首都:バンコク都
面積:513,120 k㎡
通貨:バーツ(THB)
言語:タイ語
人口:6796万人(2015年)
GDP:3,953億ドル(2015年)
国王:ラーマ10世
首相:プラユット・チャンオチャノ
世界随一の親日国家は生粋の外交上手
▲ワット・シーラッタナーサーサダーラーム。タイでは至るどころで寺院に出会う
観光大国であり、微笑みの国として知られる「タイ」。600年以上に渡って親交をあたためてきた日本に対してタイ人の好感度は世界各国の中でも飛び抜けて高く、親日国として知られています。日本人からも好感度の高いタイですが、実はとても外交上手。遡れば、東南アジアの中央に位置し日本のわずか1.4倍という国土でありながら、19世紀から20世紀にかけて植民地化を免れ、独立を維持し続けました。第二次世界大戦後はASESNやAPECに発足時から積極的に参加し、周囲との連携を強化しながら、政変やテロにも揺るがない一大バーツ経済圏を築いてきたのです。今年末にAEC(東南アジア経済共同体)発足を控え、さらなる成長が期待できるタイ不動産の魅力を検証していきましょう。
地理的優位性と外交手腕でASEANリーダーを目指す
▲東南アジアの中心に位置するタイ。ASEANにおいて名実ともに中心的な役割を担ってきた。
▲2010年1月〜2015年8月までのタイバーツのレートの推移。政変やテロが起きても、レートは上昇を続けている。
今年末に迫ったAEC発足に際して、タイは経済的成長がもっとも期待されている国のひとつです。インドシナ半島の中央に位置する地理的優位性、ASEAN諸国内での通貨と人の出入りの緩和、鉄道交通インフラ整備計画 等々、タイの発展が見込める要素は多数。また、アジア通貨危機により外国資本が参入したことで、タイは海外への輸出を積極的に行ってきました。その結果、一時的に大きな打撃を受けましたが、工業国としての実力を培い、ASEAN諸国の輸出拠点として発展してきました。2013年度のタイのGDPは、3,871億ドル、国民一人当たりは5,674ドル。これは、カンボジアのGDP 397億ドル、一人当たり2,576ドルよりはるかに高いものの、マレーシアのGDP 5,257億ドル、一人あたり17,747ドルにはまだまだ及ばない数字です。これまでも世界情勢の変化に柔軟に対応してきたタイは、AEC発足に乗じて、ワンランク上のステージを目指しています。
自動車生産台数No1を誇る東南アジアのデトロイト
新・工業都市では、駐在員向けの住宅が圧倒的に不足
▲日産、トヨタ、ホンダなど日本の大手自動車メーカーのほとんどの関連会社をタイに置く。
▲日本人街がある新・工業都市「シラチャ」。街中には多くの日本語の看板が見られる。
▲日本タイ間の過去10年の貿易額の推移(財務省貿易統計発表、単位:億円)。タイにとって、日本はアメリカ、中国とともに三大貿易取引国のひとつであり、最大の投資元でもある。
1980年代後半より、円高を背景に日本はタイに積極的に進出してきました。両国間が経済的に強固な協力関係を築いてきたことも、互いの好感度の高さに結びついている要因と言えましょう。現在、タイにとって、日本は貿易額・投資額合わせて最大の取引相手国。バンコクの日本人商工会議所への加盟企業数は1,500社を超え(2013年9月現在)、タイにおける在留邦人は64,000人以上に上っています(2014年10月現在)。首都バンコクの不動産がすでに高騰している今、次の注目株は、シラチャを始めとする新・工業都市。日本を始め、こぞって欧米の企業が進出し、急速に発展しているため、住宅需要が追いついていないのが実情です。バンコク中心部と比較して、物件の単価は安価で外国人駐在員向けなので、賃貸価格の水準が高いことも大きな魅力のひとつです。
人気のリゾートエリアでは鉄道の発展でさらなる住宅需要が期待
▲東南アジア最大規模のタイ国有鉄道。2009年にはタイ国内を5路線の高速鉄道が走る計画が発表された。
▲外国人から不動の人気を誇るパタヤ。年間400万人超の外国人観光客が訪れる。
タイ不動産を検討する際に、もうひとつ押さえておきたいのは、バンコクに次ぐ第二の都市として成長中のパタヤ。高級リゾート地として従来から高い人気を集め、バンコクから車で2時間という距離でありながら、年間400万人超の外国人観光客が訪れています。現在でも観光客の宿泊施設の供給が間に合っていないことに加え、高速鉄道計画が実現すれば、バンコクからの移動時間が一時間未満に短縮。国内外からの居住者・観光客のさらなる増加が見込めます。 パタヤ以外にも、タイ国内で拡張工事中の鉄道計画の延長戦上にある地方都市には注目です。
第三の狙い目は国内の中間所得層。日本企業の分譲事業が始まっている!
▲一人あたりの実質GDPの推移。アジア通貨危機やリーマンショック時には低迷するも順調な右肩あがりを示す。
▲バンコク中心部の活気ある街並み。都心部を中心に住宅の購入可能な中間層が増えている。
今後、タイにおいて第三の住宅供給層としてあげられるのが、自国民の中間所得層です。実際に日本の三井不動産では、バンコクでの分譲住宅事業の拡大を進めています。バンコク中心部には富裕層、その沿線部の都市には中間層向けの住宅が開発されることが予想されます。安定した経済基盤を持ちながら、まだまだ発展する伸び白を持つタイ。失業率は0.8%(2014年)という世界でも類を見ない低さを誇りますが、国民の経済格差には開きがあります。国民の40%弱が農業に就業しながら、GDPの割合は12%にとどまります。製造業の就業者は約15%でありながら、GDPは34%。また、タイの周辺国のラオスやカンボジアなどのインフラ等が整い、安定してきた時、タイよりも人件費が安いそれらの国に外国系企業が流れる可能性も懸念されますが、東南アジアの中心という絶対的に優位な立地と柔軟な全方位外交でタイがASEANを牽引していくことは間違いありません。